蝶(ちょう)と蛾(が)の正確な違いって知っていますか?
きれいな色をしているのが蝶で、地味な色合いなのが蛾だと思っているあなた、違いますよ!
今回は、生態や見た目による「蝶と蛾の違い」と「見分け方」について、身近でよく見かける蝶や蛾の例を挙げて分かりやすく説明しますね。
目次
蝶と蛾の違いその1 活動時間と羽の休め方
ミヤマカラスアゲハ(出典:Wikipedia)
アウトドアで夜にバーベキューなどをした時、明かりの近くに蛾がたくさん集まってきたことはありませんか?
そう、私たちがイメージする蛾の多くは夜行性なのです。
虫をおびき寄せるための照明器具を「誘蛾灯」と呼びますが、その言葉どおり、蛾にはある波長の光に集まる「走光性」という性質があります。
それに対して、蝶は、朝や夕方も含めた日のある時間帯に活動し、ふつう走光性はもっていません。
また、蝶は、花などにとまって羽を休める時、羽をたたむことが多いですが、蛾は広げてとまることが多いです。
しかし、蝶でもタテハチョウの仲間や、太陽の光で体を温めたい時などは羽を広げてとまっています。
また、蛾でも昼間に活動する昼光性の仲間もいます。
蝶と蛾の違いその2 羽の色や模様の美しさ
蛾(出典:Wikipedia)
昼間に飛ぶことが多い蝶や蛾は、仲間を視覚的に判別するためにきれいな色をしているといわれています。
また、きれいな色の蝶や蛾には毒のあるものもおり、鳥などに食べられないための警戒色であるという説もあります。
なかには、鳥の目玉に似たような模様をもっていて、敵に襲われそうになると羽を開いて脅かすというつわものもいるとか。
夜行性の蛾は、きれいな色をしていると目立って外敵に狙われやすくなるため、闇にまぎれるような地味な色合いをしています。
蛾でも昼行性のものは色や模様がきれいなので、私たちは「蝶かな?」と思ってしまうのです。
鱗粉は、顕微鏡で見ると魚のうろこのような形をしていて、種類や性別によって模様が異なっています。
鱗粉には、雨をはじく役割や、羽ばたきを助ける役割があり、鱗粉をすべて取り除いてしまうと、蝶や蛾は飛べなくなってしまいます。
オスの蝶や蛾の鱗粉には匂いがあるものもあり、メスを引き寄せるフェロモンのような役割をしています。
蝶と蛾の違いその3 体のかたちと触角
昼間に飛んでいて、「蝶かな?蛾かな?」と迷った時に見分ける一つの目安として、「蝶は胴体がほっそりとしていて、蛾は胴体がずんぐりとしている」というものがあります。
確かに、子どもが描く蝶のイラストは、胴体が棒のように細いですよね。
蛾の胴体はずんぐりとしていて短く、どちらかというと蜂に近いような感じです。
しかし、セセリチョウのように蝶でも胴が太い種類もいますし、細い胴体の蛾もいます。
さらに、「蝶の触角は、先が丸くなったマッチ棒のような形をしていて、蛾の触角の先は尖っていたり、櫛形になっているものが多い」という見分け方。
これはかなり信憑性があり、日本に生息する蝶と蛾は、ほぼこの見分け方で分類することができます。
卵→幼虫→さなぎ(繭)→成虫への変化は、蝶も蛾も共通
子どもの頃に、「蝶の幼虫はアオムシで、蛾の幼虫はイモムシやケムシ」と思い込んでいた記憶はありませんか?
実は、これは正確ではなく、アオムシ(=緑色のつるつるした幼虫)で蛾になる仲間もいますし、ケムシ(=長い毛で体が覆われている幼虫)でも蝶になる仲間もいます。
キアゲハのように、卵からかえった直後はケムシのような形状をしていて、成長するにつれてアオムシのような形状になるものもいます。
蝶も蛾も、卵から幼虫になり、その後さなぎや繭を経て成虫になるという「完全変態」をする昆虫です。
また、「さなぎになるのが蝶で、繭になるのが蛾」という俗説も実際には当てはまりません。
ウスバシロチョウという蝶は、繭を作ります。
しかし、「蝶の幼虫には毒はないが、蛾の幼虫には毒がある」という説は当たっています。
日本にいる蝶の幼虫で人間に害のあるものはありませんが、チャドクガという蛾の幼虫には毒針があり、素手で触るとひどいかぶれやかゆみを引き起こすので注意が必要です。
ゴイシシジミは、幼虫の時に植物性の餌を食べず、アブラムシを食べる日本唯一の蝶です。
蝶と蛾の違いと見分け方まとめ
- 蝶は昼光性が多く、蛾は夜行性が多いが、昼光性のものもいる
- 昼光性の蝶や蛾は、美しい羽の色や模様をもっている
- 蝶は胴体が細く、蛾は胴体が太いものが多い
- 蝶の触角の先は、マッチ棒のように丸く、蛾の触角の先は尖っていたり、櫛形をしている
蝶と蛾は同じ鱗翅目に分類されますが、これまでに書いてきた違いや見分け方は例外も多く、実は境界があいまいなのです。
日本に生息する蝶と蛾の仲間は5000種類いて、そのうち蝶が250種類で、残りはすべて蛾です。
蝶は蛾の一部だとする分類もあります。
ドイツ語圏やフランス語圏の国では、蝶と蛾を区別していません。
一方、英語圏の国では、蝶を「butterfly」、蛾を「moth」として区別しています。
日本では、この英語圏の分類がそのまま持ち込まれて定着しているのでしょう。