セロハンテープとは?
セロハンテープ(出典:Wikipedia)
アメリカで発明された接着剤のついたテープのことです。セロハンテープのセロハンは、「セロハン」という材料の名前です。材料であるセロハンの片面に接着剤を塗って帯状にしたものが、セロハンテープです。
いつ・どこで・だれがつくった?
セロハンテープを作ったのは、アメリカの3Mという会社が、1930年代に開発しました。はじめは商品名が「スコッチテープ」でしたので、今でも英語でセロハンテープのことを “Scotch tape“ といいます。セロハンテープを作った人は、3M社の研究社員のリチャード・ドルーという人です。
セロハンテープを作ったきっかけは?
3Mという会社は、鉱物を扱う会社でした。ドルーは、3Mで紙やすりの材料を研究したり、新型の紙やすりのテストを主に行っていました。ドルーは、その後車の古いペンキを落とすための紙やすりを売り込むため、車の工場を回りました。
当時、アメリカの自動車はツー・トンカラーといって車の車体を2色塗るのがはやっていました。一方のペンキを塗った後、二つ目とのペンキとの境目をきれいに塗るため、この部分に紙をかぶせて、両端をテープで留めます。
当時は、車にとめるテープがなかったので、絆創膏や糊を塗っていました。工場の人たちが苦労をしているのをみて、テープを作ろうと思ったのが、きっかけでした。
テープの成功!
ドルーは、数年掛け、何度も試行錯誤させながら、ついに完全な粘着テープを作り上げることに成功しました。いわゆる、マスキングテープです。押しつければぺたんと貼り付くテープは、ビニールテープ、小包用テープ、絆創膏など、今では日常で使われています。このタイプのテープを「感圧粘着テープ」といいます。
3M社はドルーの作ったテープをきっかけに、いろいろなテープをつくり、大きな会社に成長しました。
セロハンテープのの原料は?
セロハンテープは、冒頭で説明したとおり、テープの材料名です。
セロハンの原料は、もともと木材チップです。「パルプ」という植物繊維のかたまりを溶かし化学反応を起こさせます。そうすると透明なセロハンフィルムが作られます。
粘着性の主成分はゴムの木からとれる天然ゴムです。ローラで伸ばしやわらかくして加工します。加工したゴムを天然樹脂と一緒に撹拌(かくはん)して、粘着剤ができます。
これらの原料を元にセロハンが作られています。セロハンテープと呼ばれるのは、材料のセロハンのことをいっているのです。ですから、アメリカではセロハンテープといっても通じません。あくまでも「スコッチテープはセロハンで作られている」という意味でしかセロハンは使いません。ちなみに英語ではcellophane tape といいます。
セロテープとは?
セロテープ(出典:Wikipedia)
日本のニチバンという会社が、絆創膏製造の技術を応用して作ったものです。戦後日本に駐留していたGFQは、手紙の検閲をしていました。封を開けた手紙にまた封をするため、アメリカ人は、アメリカ製のセロハン粘着テープを使っていました。しかし、時々輸入が遅れ、品不足になりました。そこで絆創膏を製造していたニチバンに打診してできたのが、セロハンテープです。セロハンテープは、ニチバンの商品名です。
ニチバンはどんな会社?
ニチバンの創業は、1918年(大正7年)です。絆創膏や軟膏を作る会社でした。会社創業の頃は、歌橋製作所といいました。
歌橋製作所は、昭和3年にドルーと同じ事を考え、試作品を作っていたのです。しかし日本では、セロハンの値段があまりにも高価で、仮に作ってもとても売れる見込みはありませんでした。それで、それ以上の開発には至りませんでした。
そうこうしているうち、戦争になりました。この戦争で活躍した戦闘機「ゼロ戦」の機体にマークや番号をぬるときに「ニチバン」と名前を変えた歌橋製作所のセロハンテープが、マスキングテープとして使われたのです。このときの使われたテープは「セロハン貼付紙」と名付けられたものでした。
戦後のニチバン
日本は戦争に破れ、多くのアメリカ人が日本に来ました。当時のニチバンの社長は、アメリカ帰りの人にセロハンテープを見せられ、「何だ、うちのセロハン貼付紙じゃないか。」と思ったそうです。GHQがセロハンテープを使っていることを聞き、ニチバンでは試作品を早速作っていました。そこへGHQの依頼が来ました。ニチバンはすぐに粘着テープを納品しました。GHQの将校たちは、短期間で良質のテープを作り上げた日本の技術力に驚いたそうです。
セロテープとして市場へ
GHQへの納品から安定生産のめどがたったので、改めてこのテープを「セロテープ」と名付け市販を開始したのです。
「セロハンテープ」と「セロテープ」の違いは?
- セロハンテープはアメリカで生産された粘着性のテープのことをいいます。セロハンで作ることからセロハンテープといわれ、セロハンはテープの材料です。セロテープは、日本のニチバン粘着性テープの商品名です。
- アメリカのセロハンテープは、車の塗装のマスキングテープとして使われていました。日本のセロテープの原型であるセロハン貼付紙は、ゼロ戦のマークや番号の塗装のマスキングテープでした。
- アメリカのセロハンテープは、3M社が開発しました。日本のセロテープは、ニチバンの前身の歌橋製作所が、開発研究をしていました。その後、名前を変えたニチバンという会社が販売をしました。
まとめ
セロハンテープは、材料からそう呼ばれていますが、英語ではセロハンテープではつうじません。しかし、セロハンに粘着糊をつけたのは、当時のアメリカでもとても画期的なことだったと思います。それにしても同じころ、日本でも粘着テープの開発研究が行われていたとは、さすが物作りの日本です。ただ、発売当時はものを貼るという習慣が日本にはなかったため、販売には大変苦労したそうです。
ところで、セロテープの幅が12mm, 24mmと中途半端なのはなぜかわかりますか?
GHQの担当者がインチ(1インチ 約25.4mm)を基準として、12mmを1/2インチ、18mmを3/4インチ、24mを1インチと定めたからだそうです。現在でもテープのサイズは、インチを使われています。
今では、家・学校・職場など、どこにでもあるセロテープですが、開発から普及までずいぶん長い道のりだったのでね。今では、セロテープのない生活なんて考えられませんよね。