秋の風物詩ともいえる紅葉(こうよう)。
紅葉といって一番最初にイメージするのは、やはり真っ赤に染まったモミジの葉ではではないでしょうか?
でも、モミジって、本当はカエデという木だって聞いたことがありませんか?
じゃあ、真っ赤になったカエデの葉がモミジなの?
混乱しがちな「楓(カエデ)」と「紅葉(モミジ)」の違いについて、調べてみました。
「楓(カエデ)」と「紅葉(モミジ)」は同じ植物なの?
結論から先にいってしまうと、「楓(カエデ)」と「紅葉(モミジ)」に分類学的な差はありません。
イロハモミジなど、モミジと名のつく植物もありますが、カエデ科カエデ属に属します。
モミジ科やモミジ属という分類はないのです。
では、なぜ「楓(カエデ)」と「紅葉(モミジ)」のように区別して呼ばれているのでしょうか?
実は、カエデ属の中でも、「葉の切れ込みが深く、5つ以上に分かれている子どものてのひら状の形のもの」を慣用的にモミジと呼んでいるのです。
これに対して、「葉の切れ込みが浅く、3つ程度に分かれているウチワ状の形のもの」はカエデと呼ばれています。
また、もっと狭い意味では「カエデ」が紅葉した葉を「モミジ」ということもあります。
「楓(カエデ)」と「紅葉(モミジ)」の名前の由来
カエデという名前の由来は、葉がカエルの手のような形をしていることから、蛙手→カエデと派生したという説が一般的なようです。
一方、モミジについてですが、古来は、植物の葉が赤や黄色に変わることを「もみづ」と呼んでおり、それが名詞化したものが「もみじ」であるといわれています。
また、この「もみづ」という言葉は、ベニバナを使った染め物をする際に、花をもんで赤や黄色の色を出すという「揉み出づ」からきているという説が有力であるようです。
つまり、紅葉した葉全般を「モミジ」と呼んでいたということです。
ちなみに、奈良時代は「黄葉」もモミジと呼んでおり、万葉集では「紅葉」という表記よりも「黄葉」という表記の方が圧倒的に多いそうです。
「楓(カエデ)」にまつわるあれこれ
カナダの国旗がカエデの葉だというのは、皆さん知っていますよね?
カナダの国旗に使われているのは、サトウカエデという種類で、英名はシュガーメイプル。
樹液はメープルシュガーの原料になります。
国旗の中のカエデの葉は、よく見ると枝と葉に尖った部分が12個あって、これは、カナダの12の州(2つの準州を含む)を表しているといわれています。
シュガーメイプルは、日本のカエデと比べると葉もかなり大きく、高さは20~30mにもなるそうです。
秋には、赤や黄色に紅葉します。
幹はハードメイプルと呼ばれ、堅くてきめが細かいことから、ボーリングのレーンやバット、フローリング材などに利用されています。
百人一首にみる「紅葉(モミジ)」の名歌
ここで少し脱線を。
最近は競技かるたの世界などでも親しまれている百人一首ですが、この百人一首のなかに「紅葉」を詠んだ歌は6つあります。
5つまでは、歌の中に「紅葉」という言葉がはっきり出てくるので分かりやすいのですが、1つだけ、よく詠みとらないと分からない歌があるんですね。
それが、在原業平朝臣の「ちはやぶる 神代もきかず 龍田川 からくれなゐに 水くくるとは」という一首です。
落語の題材に用いられたり、 映画のタイトルに使われたりもしているので、ご存じの方も多い歌だと思います。
この歌をざっくりと説明すると、「神代(=神様が大勢いた太古の時代)にも、こんな不思議なことがあったとは聞いていない。龍田川が、散った紅葉で水を紅の美しい絞り染めにするなどということは」という意味で、龍田川に浮かぶ紅葉の艶やかさを讃えているといわれています。
「からくれなゐ」は、「唐紅」で、唐や韓から渡ってきた調度品のような色鮮やかな紅、という意味だそうですが、これが川に散った一面の紅葉を指しているんですね。
それほど見事な紅葉とはどのようなものだったのでしょうか?
実際に見てみたくなりますね。
「楓(カエデ)」と「紅葉(モミジ)」の違いまとめ
- 「楓(カエデ)」と「紅葉(モミジ)」は、同じ植物に分類されるが、葉の形や切れ込みの深さで区別されていることが多い。
- 狭い意味では「楓(カエデ)」が紅葉した葉を「紅葉(モミジ)」ということもある。
- 古来の日本では、紅葉した葉全般を「紅葉(モミジ)」と呼んでいた。
- 外国には、「楓(カエデ)」と「紅葉(モミジ)」の区別はない。
いかがでしたでしょうか?これから先紅葉を見る時は、今までと違った視点で楽しめそうですね。